シンデレラン・ライフ

 K子の話をしよう。
K子には彼的な人がいる。
彼的な人はK子にとってすべてそのままでいられる
存在。ビリー・ジョエルの「素顔のままで」
アイ・ライク・ユー・ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー。

 それでも、女であるから。
好きな人には綺麗に見られたいと思う。
新しい服を買ったときには、お披露目したいと思う。

そんなふうにして楽しい時間を過ごした後、
K子はうちに帰る。留守電を確認し、夫の帰宅時間を
知る。それから、すべて脱ぎ捨てて汚い普段着に
着替える。

K子は、新しい服のことを夫に知らせない。
必要がないから。

 K子の生活には、意地悪なまま母も、姉たちも、
かぼちゃの馬車も登場しない。
それでも、なんだかシンデレラっぽい感じがする。
えせシンデレラ。
 門限はないが、夫の帰宅時間に間に合わなくてはならない。
 魔法が解けて灰かぶりに戻るわけではないが、
勝手に自分で普段モードに戻す。

 夫に対してK子は嘘を言うのではなく。
 ほんとうのことを言わないだけだ。

 ガラスの靴なら。
 ガラスの靴なら、もう、置いていかなくたって
わたしのことはわかっているでしょう?



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